はじめに
「オギャア」という声と共に生まれてくる赤ちゃん。
人生で目にする光景の中でも最も神秘的な一瞬の一つです。妊娠が分かり、お腹が次第にふくらんできて、そっと手を当てると赤ちゃんの動きが感じられる。耳を当てると赤ちゃんのかすかな鼓動も聞こえてきます。どんな顔をしているのかな?どんな子に育つだろう?ワクワクしてきますね。
ここではこの「妊娠」について考えてみたいと思います。
妊娠前に女性の体内で起きる事
女性の卵巣の中では卵子の元となる卵胞が数十個も育てられています。そしてその中の卵胞がホルモンの影響を受けて一つだけ選ばれて育ち、月1回の周期で卵管に向けて排出されます。左右どちらの卵巣から排卵されるのか特に決まりは無く、左右の卵巣内でどの卵胞がホルモンの影響を強く受けたかによって決まります。
卵巣から排卵された卵子は卵管の中を子宮に向かって下り、その一方、男性が排卵日に合わせて女性の体内に射精すると精子はさかのぼるように泳ぎ、左右の卵管に進入していきます。左右どちらかの卵管内で卵子にたどり着くまで精子は泳ぎ続け、運良く一番乗りできた精子だけが卵子と結びついて受精卵を作ることができるのです。受精は通常、卵管の卵巣に近い部分でラッパのように広くなっている部位で起こります。
受精
鞭毛(べんもう)と呼ばれるしっぽを使って元気に泳ぎ続けた精子は卵子にたどり着き、そこで最後の難関に挑むことになります。透明帯(Zona Pellucida)と呼ばれる卵子の周りの膜を突き破らなければ卵子の中には入れません。精子の先端部にはこの透明帯のタンパク質を破るための酵素(アクロシンなど)が装填されていて、透明帯に接した精子はこの酵素を使って透明帯を溶かしながら中に入ろうとします。
およそ2~3億個の精子が射精されて卵管へと進み、卵管の奥で卵子の周りに到達出来るのは300~500個程度だと言われています。その内の一つだけが受精に必要とされますが、その他の精子は選ばれた精子の邪魔をしているわけではなく、透明帯を弱くする手助けをおこなっていると考えられています。
透明帯を通り抜けて卵子の表面に精子が接した瞬間、リソソームが卵子から分泌されて透明帯が変質し、他の精子が遮断されます。
こうして通常、一つの精子と卵子が結合して一つの受精卵が誕生するのです。
着床と妊娠
受精後約30時間で受精卵は2細胞になり、次第に細胞の数が増えて胞胚期になった頃、子宮体部に着床します。排卵が起きてから卵管で受精し、子宮に着床するまでおよそ5~6日かかります。受精した瞬間や、着床した瞬間に妊娠したかどうか判定しようとしてもそれは不可能です。着床した胞胚がさらに細胞分裂を繰り返し、子宮内膜に埋め込まれた状態になって始めて妊娠しているかどうかが判明するからです。妊娠検査薬はhCG(ヒト絨毛ゴナドトロピン)という人間の胎盤から分泌されるホルモンに反応するようになっていて、血液中や尿中の濃度が一定量以上にならないと判定できません。hCGは着床直後から分泌されますが、胎盤を作る絨毛組織がある程度大きくなって、hCGの量が増え続けている事が確認できてから妊娠しているかどうかようやく判定できます。
正常に妊娠した場合、排卵日から3週間後(月経予定日の1週間後)に妊娠検査薬を使うとクッキリと陽性の判定が出ます。
こうして妊娠が判明した瞬間、多くの人が驚き、その喜びを周りの人と分かち合おうとしますが、赤ちゃんが欲しくてもなかなか授からないカップルが数多くいる事を忘れてはなりません。

